客室はホテルの主力商品であり、宿泊客の消費習慣や支出能力はそれぞれ異なります。そのため、求められる商品やサービスにも違いがあります。では、宿泊客のニーズを満たしつつ、異なるタイプの客室をどのように設定すれば、収益の最大化を実現できるのでしょうか?
ホテルの一般的な客室タイプ
面積や内装設備に応じて、ホテルの客室タイプは以下のように分類されます:
スタンダードルーム(ダブル/ツイン)、スーペリアルーム、デラックスルーム、スイートルーム。
また、景観や設備の特徴などを名称に取り入れて、顧客の心理的ニーズに合わせた細分化も行われています。中小規模のホテルの場合、一般的な消費傾向に合った客室タイプの設定が重要です。
ホテルにおけるダブルルームとツインルームの割合は、一般的に 7:3、6:4、5:5 といった比率が多く、ビジネス客が多いエリアでは、ツインルームが70%を占めることもあります。
一部のホテルでは、ツインルームのベッド間にナイトテーブルを設置せず、ベッドを並べてダブルユース可能な「コンバーチブルルーム」として設計し、実際のニーズに柔軟に対応しています。
分類1:客室構成による分類
■ ダブルルーム(大床房)
対象顧客:
ビジネス客、カップル、個人旅行客、親子連れファミリーなど。
■ ツインルーム(双床房/スタンダードルーム)
通常、シングルベッド2台が設置された客室で、団体旅行や会議利用客に人気です。
対象顧客:
団体旅行客、旅行会社経由のゲスト、会議利用のビジネス客など。
■ 特別ルーム(特色房型)
スイートルーム、ラグジュアリールーム、禁煙ルームなど、ホテルの個性が反映された客室タイプ。
対象顧客:
上質な体験や特別な空間を求める高級志向の宿泊客。
ホテルは、自身の客層市場を分析し、提供する客室タイプやその割合を決定する必要があります。
さらに、客室ごとの価格帯に差を設けることで、価格レンジが広がり、幅広いターゲット層へのアプローチが可能になります。
高価格帯の客室は、消費意欲が高く、設備やサービスにこだわる宿泊客のニーズを満たし、同時にホテルの収益向上にも貢献します。
分類2:収益レベル別の価格グレード
特価ルーム < 主力ルームA < 主力ルームB < 収益ルーム
■ 特価ルーム(特价房型)
特価ルームは、ホテルの中で最も価格が安い部屋であり、多くはシングルルームまたはスタンダードルームに該当します。全体客室数の約**10%**を占めるのが一般的です。
間取りが不規則だったり、小さな欠点があることもありますが、目的は集客と稼働率の向上です。
- 稼働率が高い時期(繁忙期)には、特価ルームの設定数を減らすべきです。特に連休や祝日前は、事前に販売制限(コントロール)をかけ、利益の取りこぼしを防ぎましょう。
- 稼働率が低い時期(閑散期)には、特価ルームの数を増やし、低価格で集客を図り、稼働率を高める施策として活用できます。
■ 主力ルーム(主力房型)
主力ルームは、ホテルの主要な収益源となる部屋であり、一般的に「スーペリアダブルルーム」や「スーペリアツインルーム」が該当します。
全体客室の約60%を占め、稼働率も比較的高いのが特徴です。
以下のように、価格を2段階に分けた設定を推奨します:
- 例:スーペリアダブルルーム(主力A)/デラックスダブルルーム(主力B)
このような価格設計のメリット:
- 価格差による比較で、高単価の部屋へ誘導できる
- 在庫管理を通じて、収益最大化が可能
- 稼働率が低い場合:無料アップグレードでユーザー体験を向上させるか、低価格ルームの在庫を増やし、予約転換率を高める
- 稼働率が高い場合:高価格ルームを多く確保し、平均客室単価(ADR)を上昇させる戦略が有効です
■ 収益ルーム(收益房型)
収益ルームは、ホテルで最も価格が高い部屋であり、スイートルーム、ファミリールームなどが該当します。
建築コストの観点では、スイートルーム1室で標準客室2室分以上のスペースが必要です。
- 高単価な反面、市場のニーズは限られているため、設置数を抑える必要があります。
- 特に中小規模や中価格帯のホテルでは、過剰な設定は避け、バランスを取ることが重要です。
部屋タイプ分類の原則
■ 部屋タイプ分類はシンプルかつ分かりやすく
部屋タイプの分類はできるだけシンプルで明瞭にすることが重要で、通常は6〜8種類程度に抑えるのが望ましいです。
部屋の種類が多ければ多いほど良いわけではありません。なぜなら、OTA(オンライン旅行代理店)やホテルのフロントで予約する際、お客様は短時間で決断を迫られるため、分類が複雑すぎると選択が難しくなり、予約をやめてしまう可能性があるからです。
特に注意したい点:
ここで言うのは「分類の原則」であって、「命名」ではありません。分類した後の具体的な部屋名は、市場のニーズや部屋の特徴に応じて決めます。例えば「デラックスルーム」か「スイートルーム」か、「スーペリアダブルルーム」か「シティビュー・ダブルルーム」などです。
■ 価格設定の論理に合致させる
価格設定の論理は、アップセルやグレードアップ販売を行う際に、価格差によってお客様に部屋の違いが明確に伝わり、差額を支払う価値を感じてもらうために必要です。
- 各部屋タイプ間の価格差は5%〜10%程度に設定することを推奨します。
- 繁忙期や祝日などは、価格差を適度に大きくしても構いません。
価格差が大きすぎると、お客様が離れてしまうリスクがあります。
特に注意したい点:
ホテルの管理者は、各客室の広さ、向き、間取り、さらにはインテリアの配置まで詳細に把握し、部屋タイプの分類や収容能力の管理を適切に行う必要があります。
部屋タイプの命名原則
部屋タイプの名称は、その部屋の特徴を簡潔かつ的確に表現する必要があります。
お客様がホテルのフロントやOTAプラットフォームで部屋を探す際に、わかりやすい名称は予約の成約率を大きく高める効果があります。